欠損の原因と結果・残存歯の状況
残存歯の配置と咬合支持
欠損様式の分類と治療方針
良き補綴物(デンチャー)


超かんたん技工に必要な欠損補綴学(1)
欠損の原因と結果  
欠損に至った原因の多くは虫歯と歯周病です、日本人はこの二大疾患で91%以上の歯牙が抜歯されています。
原因が何であっても欠損することは残存する歯牙や軟組織に悪影響を与えることは間違いありません。
たとえ1本の欠損でも対合歯の挺出・隣在歯の傾斜・傾斜部位の歯槽骨吸収と多くの不可逆的な症状が出てきます、まして多数歯欠損になると多くの問題を抱えますから放置したままで生活していると、破壊は時間を追って徐々に口腔全般、強いては消化器系まで蝕んでいきます。
欠損が発生した時点で回復する方法を考えなければなりません。
原因が虫歯或いは歯周病かでは今後の治療方針に大きく影響し、虫歯での欠損は残存歯も大抵骨植も良く少数歯欠損でしたらブリッジで回復することができます。しかし歯周病での欠損は歯周組織の破壊が進んで残存歯も骨植が悪くなっていることが多くリスクを背負って一次固定ブリッジにするか或いはデンチャーを選択するしかないのです。
下の図は虫歯で抜歯に至ったケースと歯周病で抜歯に至ったケースを図式したものです。
どちらも健康で出発していますが、途中で病状が違うとBとEの顎堤ように分かれてしまいます。

しかし補綴後にもBからEに移行することもあります、後で説明することになりますが欠損部に咬合する度に動くような義歯が装着されると顎堤に生理的咬合以上の圧が加わることになり、 このような圧が常時加えられると義歯床下の顎堤が大きく吸収してしまいます。すれ違い咬合などで受圧側の歯槽骨にダメージが与えられると発症することがあります。模型上の極端な吸収と欠損の原因は、履歴を聞いてみると合致することがあります。
前歯部でも発現します、上顎口蓋雛壁付近から乳頭部にかけて歯槽骨の裏打ちの無い柔らかな粘膜を見ることがあります、これをフラビーガムといい下顎の義歯が咬み込む度に上の義歯の前歯部がフカフカすることになります。手指で押してみるとその部分全体が動きます。

残存歯の状況
3-1
欠損した部位を回復すれば完了ですか?
それは私が30数年前に技工学校を卒業した頃の歯科治療で、未だに同じような考え方をしてる方はいないでしょうネ。
では当時と今では何が違うのでしょう、多分残存歯欠損部の回復手技ばかりで議論されていて残存歯の保護や歯牙支持組織を見てなかったように感じます。
欠損を埋めるとは残存歯や顎堤或いは支持組織の犠牲で成り立っている訳で、どんなに多く残存してても支持組織の破壊が進んでいたり動揺していたり歯冠歯根比がアンバランスになっていては当然支台装置として使うとリスクを負うことになります。
前ページの歯周学の診査はここでも重要な部分を占めており、他に齲蝕や歯髄の有無そして詳細な咬合の診査も加わってきて、それらの資料と患者さんの意向も聞き治療計画を模索しなければならないのです。
1)齲蝕の有無    
2)歯髄の有無    
3)歯周組織の診査    
  プロービング  
  プロービング時の出血(B O D)  
  歯肉退縮の量  
  付着歯肉の幅  
  根分岐部病変  
  X線診査  
  プラークスコア  
  動揺度  
  咬合診査(個歯)  
4)咬合の診査    
  咬合の分類
咬合位の安定性
咬合平面の自然さ
被蓋の量(切歯・犬歯)
開閉・咀嚼運動の診査
 

六つの「カギ」  
次のページでは最も重要な 残存歯の配置や咬合支持の説明に移ります。欠損様式の多様性や残存歯の状況を考慮に入れて治療方針を考えるにはあまりにも沢山の要素が縦横に絡み合っています。一方向からではなく多面的に見る洞察力が必要で、あたかもクロスワードパズルを解くかのように柔軟に対応しなければなりません。
では、パズルを解く「カギ」

パズルの一つ目の「カギ」上の1)・2)・3)の項目で残存歯の病態を掴むことです。