欠損の原因と結果・残存歯の状況
残存歯の配置と咬合支持
欠損様式の分類と治療方針
良き補綴物(デンチャー)


超かんたん技工に必要な欠損補綴学(3)
欠損様式の分類  
ここでは、欠損状態を分類し患者さんの病態を単純化する幾つかの方法をご紹介します。
単純化する意義は病状の危険度や進行度を知り、予後の経過を予測することができ治療計画の一助になるからです。
では欠損様式は何パターンあるのでしょうか?
片顎でも1歯欠損は14種、2歯欠損は91種、3歯は365種の欠損パターンがあり4歯〜14歯へと続き計算できないほど多様であります。まして上下顎の欠損様式では何桁になるか想像もできません。(268、000、000もの欠損様式があります ケルバーの補綴学より)
しかし、欠損していくには一定の法則があり、まず齲蝕でも歯周病でも大臼歯から欠損が始まり小臼歯・上顎前歯・下顎前歯と波及していくのです。もちろん全てこの順番で欠損していく訳ではないのですが、最初に萌出する大臼歯・プラーク残留し易い上顎前歯・臼歯の根形態など危険な環境にさらされている歯から崩壊が進んでいき、治療・補綴を繰り返すたびに寿命が短くなっていくように思われます。
下記の4分類でKennedyは片顎の欠損のみで分類していますが、他の三氏は上下関係も考慮にいれた分類になっています。3-2
私が説明できる範囲で記述しますから、どなたか追加・訂正していただけたら嬉しく思います

下記分類や説明に全く自信が無く不安ですが記載して今後再勉強して訂正いたします。
  Kennedy'sの分類
  Eichner'sの分類
  金子の咬合支持指数
  宮地の咬合三角

Kennedy'sの分類 
  この分類法は、1923年にEdward Kennedyによって考えだされたもので、非常に実用的であるが対顎の存在を考慮に入れないので重要な咬合支持に関しては解らない欠点があります。
  Class 1 両側性の歯牙欠損が残存歯の後方に位置する
  Class 2 片側性の歯牙欠損が残存歯の後方に位置する
  Class 3 片側性の歯牙欠損の近遠心に残存歯がある
  Class 4 欠損部が正中をまたぎ左右両側後方に残存歯がある
  付随的欠損部位(Modification)と呼ばれる数値があり、上の分類の他に欠損部が1箇所あればClass 1 Modification1のように表される、
現在はあまり使われておりません。
Eichner'sの分類  
  この分類は Kennedyの分類より30年ほど後に発表されたもので、咬合支持域の有無で大分類し支持域数で小分類するような方式です。
  A-1 咬合支持域が4箇所あるもの欠損のない歯列
  A-2 咬合支持域が4箇所あるもの片顎に限局した欠損のある歯列
  A-3 咬合支持域が4箇所あるもの上下顎に欠損のある歯列
  B-1 咬合支持域が3箇所あるもの
  B-2 咬合支持域が2箇所あるもの
  B-3 咬合支持域が1箇所あるもの
  B-4 咬合支持域がなく前歯部のみで接触している歯列
  C-1 咬合支持がなく上下に残存歯が存在する歯列
  C-2 咬合支持がなく片顎は無歯顎の歯列
  C-3 上下とも無歯顎
  Eichnerの分類は咬合支持域を考慮して大雑把に分類してありますが、意外と明確に病態を把握しやすいと言われています。
金子の咬合支持指数 3-3
  歯牙にそれぞれ切歯=1、犬歯・小臼歯=2、大臼歯=4ポイントを与えて支持してる歯の数値を分子にし残存してる歯の数値を分母にしている。全体のバランスを掴みやすく受圧・加圧の状態もわかり易い方式です。
@の残存歯のポイントは30、支持してる歯のポイントは24で、24/30となります。
Aの残存歯のポイントは42、支持してる歯のポイントは20で、20/42となります。
同じ残存数なのにAの咬合支持歯数は悪く予後に不安が残ります。
@
A
宮地の咬合三角3-5
  宮地の咬合三角と呼ばれ、理論は対合箇所数と欠損進行歯数の減少をそれぞれ縦軸と横軸に振り分けして座標位置で症例の難易度を読み取る方式です、単純ですが視覚的に健康状態から総義歯までの難易度を三角域で現わすことができる優れた分類方法です。
例えば右下のような症例をグラフ上にマークしてみましょう、グラフの下方にマークされるほど難症例と判断されます。したがって残存歯数が多いピンクの症例と緑の症例では、残存歯数が多いがピンクの症例の方が難易度が高いと判断できます。
このように残存歯数と対合箇所が相関関係にあり、たとえ残存歯数が同じでも対合箇所が少ないほど下方にマークされ、難症例になっていきます。

治療方針  
治療方針を立てるには補綴後を予知できるスキルが必要になってきます。では予知性は簡単に身につけられるでしょうか。たとえば地震予知は未だに出来ません、現状では発生直後の地震波を察知し、地震が伝わる速度より早く情報を伝達して初期対応するところまでです。患者さんの予知もやはりできません、しかし歯科補綴では”そっくり症例”と見比べることで大きく外さない予知ができるのではないでしょうか?
先ほど述べましたように欠損していくには一定の法則があり”そっくり症例”は意外と簡単に出会うことができますが、それだけで予知はできません。”そっくり症例”を経過観察し予後を見続けていないと予知はできないのです。記憶内容が自分の記憶貯蔵庫にあればその引き出しから出せるのですが無いものは引き出せません。つまり自分が経験するか或いは雑誌や研修会で講師の体験をあたかも自身が経験したかのように記憶貯蔵庫に入れておけば引き出せるのではないでしょうか。
つまり、治療計画とは経験(体験・論文・講演)の結果を糧として術者と患者さんで選択肢を考えることだと思います。
 

 
インプラントかブリッジか或いはデンチャーか?
ここでは、インプラントの選択肢は考えないで、ブリッジかデンチャーかについて治療方針を考えたいと思います。
まず、ブリッジを選択するには条件があります、第一に欠損歯数より支台歯数の方が多いこと、支台となる歯牙の状況が良好で欠損歯分の咬合力を負担できることです。
ここで金子先生の分類が応用できます。
切歯=1、犬歯・小臼歯=2、大臼歯=4にそれぞれポイントを与えてます、但し側切歯が支台歯となる場合は0.5ポイントにするほうが良いように思われます。
(支台歯のポイント総数)>(欠損歯のポイント総数)可能
(支台歯のポイント総数)=(欠損歯のポイント総数)危険
(支台歯のポイント総数)<(欠損歯のポイント総数)不適

21|12欠損の症例では欠損ポイントは4、3|3の支台歯ポイントは4、したがって危険ですが支台歯の状況が良ければブリッジとして成り立つでしょう。

21|1欠損の症例では欠損ポイントは3、3|23を支台歯とするならば支台歯ポイントは4.5で、ブリッジとして成り立つでしょう。
しかし、3|2のみ支台歯にすると支台歯ポイントは2.5となりますから、ブリッジとしては不適となるでしょう。
あくまで目安で他の条件を考慮に入れると危険も不適になることも多々あります。
ブリッジが危険、不適であれば他の方法を選択せねばなりません、困ったときのデンチャーです。
でも、デンチャーほど曲者はありません、術者や患者さんは装着するとあたかも治療が終了したこのように勘違いしてしまいます。
デンチャーは破壊補綴物と考えています、しかし無処置のままで過ごすより機能性があり破壊スピードが遅ければ良き補綴物といえます。
では良き補綴物(デンチャー)を考えてみましょう。