欠損の原因と結果・残存歯の状況
残存歯の配置と咬合支持
損様式の分類と治療方針

良き補綴物(デンチャー)


超かんたん技工に必要な欠損補綴学(2)
残存歯の配置と咬合支持  
このように全ての歯が揃っていると素晴らしいハーモニーを奏でることが出来ますが・・・(前方位でパチリ)
どんな微笑でも1本欠損すると直視できませんネ


残存歯の状況を把握したら、残存する歯数、配置、咬合関係を知らなければなりません。
まず口腔内の現状を咬合器上に移して欠損様式や咬合支持数・咬合状態を観察します。

二つ目の「カギ」はもちろん残存歯数です。多いことに越したことはありませんが片顎のみで考えてはいけません、たとえ片顎しか補綴しなくても上下顎を一対として考え全ての残存歯数の和として考えます。
欠損様式は多様であり前歯・臼歯はそれぞれ機能が違いますから別々にカウントされなければならないが、ここでは残存歯数のみカウントします。これが二つ目の「カギ」です。
但し下の受圧・加圧の項目で説明しますが、加圧要素である残存歯数が多いと顎堤に対して負担が多すぎ予後の悪いケースもあることも忘れてはなりません。

三つ目の「カギ」残存歯の配置状況です、理想的に欠損していればラッキーですが神様は術者に都合よくは残してくれません。
下図は両方とも14歯欠損ですが誰が見ても@の症例は長期的に見て良い経過をたどることは想像できます、しかしAは治療方針を立てることすら困難なように思われます。
つまり、咬合を支持してる歯牙が4箇所に残っているのと全く残っていないのとでは雲泥の差があるのです。
上下咬合を支持している部分が何箇所あるかが三つ目の「カギ」です。
@
A

四つ目の「カギ」受圧要素・加圧要素の数
上の図で咬合支持していない歯を加圧要素、その圧を顎堤が受けることを受圧要素という言葉で表します。例えば@では支持に関与せず顎堤に向かっている歯はFfのみですが Aでは残存歯全てが顎堤に向かっています、この膨大な咬合圧は顎堤で受け止めるしかなく咬合高径の低下やスピーの湾曲の狂い・顎堤の吸収などが予測され難症例と言わざるをえません。

B
 
しかし、AとBは残存歯数”14”咬合支持数”0”なのに難易度に大きな差があります、配置によっては受圧・加圧要件が違う欠損様式もあり一概に数値では語れない経験と勘が要求される「カギ」部分です。

五つ目の「カギ」キーティースを大切に
残存している中で咬合を支持している歯、歯根面積の大きい歯、遊離端を防いでいる歯は坂道を転げ落ちる速度を緩めるストッパーの役割をしてくれます。特に欠損側に臨在する歯は補綴するには何らかの力が懸かってきます、ブリッジでは支台歯として荷重の負担を担わなければならないし、デンチャーではレストやクラスプで咬合の荷重や脱着時の洗礼を受けなければなりません。それが長い遊離端ですと数歯分の咬合圧が遊離端側へと引くベクトルとして働き歯根膜腔の拡大や歯槽骨の吸収・根破折の危険を生じてきます。このキーティースに機能を負担させると後々に大きな代償を払わなければならないので、それを覚悟した方針の選択をしなければなりません。
 

 
六つ目の「カギ」は何本の犬歯が残存しているか?
例えばほどほどの犬歯が4本存在してれば大胆に咬合再構成し理想な咬合平面を再現することができ、リジッドなデンチャーで予後の良い喜ばれるのデンチャーを作ることは容易ではないでしょうか。
もし、私が担当したら確実に機能の回復と破壊の速度を緩めることができると確信できます、犬歯の残存は成否を左右する大きな「カギ」なのです。