健全歯肉とは
診査
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初期治療とスケーリング・ルートプレーニング
歯周外科メンテナンス
 

超かんたん技工に必要な歯周学(2)

   

歯周診査には下記項目のデータを収集しますが前ページの”健全歯肉の状態をを基準として、そこからどの程度の健康状態であるかを掴むことにあります。
各項目は互いに関連していてプロービング値が多いと細菌数が増え出血しやすくなります、何の処置もしなければ付着歯肉が減少し歯槽骨の吸収が進行していきます。例えば学業成績であれば1科目が悪くても平均点が下がるだけで他の科目に影響することはありません。しかし、歯周診査の項目は一つの項目の評価が悪いと大抵他の項目も悪くなっています。
逆に1項目が良くなると他の評価も一諸に良くなってきますので、患者さんのモチベーションも高くなると言われています。
三分類を9項目に分け列記しましたが、患者さん全てに全項目を診査することはありませんが、歯周病が疑われる患者さんの病気の現状と将来の治療計画の立案に不可欠な項目を診査するのです。


診査項目    
  歯周軟組織の診査 1.プロービング
    2.プロービング時の出血(B O P)
    3.歯肉退縮の量
    4.付着歯肉の幅
    5.根分岐部病変
     
  硬組織の診査 6.X線診査
    7.咬合診査
     
  その他 8.プラークスコア
    9.動揺度

A 歯周軟組織の診査
1.プロービングとは
1.プロービングとは
  遊離歯肉溝に一定の圧力でプローブを挿入し停止した位置で目盛を読み、それがプロービング値となる。
歯の周りを4〜6点計測法で行い数値が3mm以内なら健康でサルカスと呼び深くて病的であればポケットと呼びます
  例えば補綴物のマージン設定位置が歯肉縁下3mm以上のところに設定されたなら病的なポケットを有する歯牙にクラウンを装着することになります。縁下深い齲蝕もこれに準じます。
 

2.プロービング時の出血(B O P)  
  2.プロービング時の出血(B O P)
2-2
  Bleeding On Probing
プロービング時に歯肉溝より出血するときはB O P(+)と記入し、この部位は特に炎症が強いと判断します。つまり歯周病菌が多く存在するのでプロービング値以上に注意を要します。

3.歯肉退縮の量   
  健全な歯肉ではセメントエナメル境(CEJ)まで結合組織があったはずで、現在の状況は辺縁歯肉がCEJより歯根方向へ退縮したと考えられます。
これは、今後の治療やメンテナンス時の基準となりますので、比較しやすい画像として残したい診査項目です
”歯肉退縮量+プロービング値=付着レベル”この計算式は健全より付着レベルを失った程度を表し、疾病の進行度を知る指標です。歯肉退縮が起こるとセメント質が現れ知覚過敏や根面齲蝕の危険性が増します。
 
  私見ですが付着レベル(Attachment Level)と呼ぶより付着の喪失(Attachment Loss)のほうが理解し易いように思います。

4.付着歯肉の幅
 

上の二枚の図を見比べてください。プロービング値が同じなのに付着歯肉の幅が違います。
”角化歯肉の幅-プロービング値=付着歯肉の幅”この計算式では付着歯肉とセメントエナメル境とは直接関係しません。
したがって歯肉の退縮と連動して総合判断しなければなりません。

角化歯
コラーゲン繊維に富んで肥厚性があり細菌やブラッシング・食物の刺激にも抵抗力があります

では付着歯肉の幅が同じでも角化歯肉の幅が違うケースがあります。
上の2枚では付着歯肉の幅が同じでも左図は幾分病的であり、右図はプロービング値が少なく健康的歯肉に見えますが、歯肉が退縮して知覚過敏などの弊害を起こしている可能性があります。
このように、実際には”角化歯肉の幅-プロービング値=付着歯肉の幅”計算されます、当然幅が広くて厚いほど血流があり化学的・力学的に抵抗力があるということです。

5.根分岐部病変
 
一般に大臼歯は上顎3根・下顎2根の根を有し、根が開いていることで咬合圧をしっかり受け止めてくれるのです。しかし、清掃性から考えると、これがネックとなり病気の発生源になりやすく一度発症すると治癒することがとても難しい場所なのです。
根分岐部病変は分岐部の横穴の深さを測ることで病気の進行度を知ることができます
根分岐部にプローブを水平的に挿入し先端が止まった位置で判断します
歯冠の幅の1/3以内Class T
歯冠の幅の1/3を越えるClass U
反対側と交通Class V
 
副根歯以外にも単根歯で水平にカットしたときに現れる凹部も分岐部と同じ危険性を持っています。
大臼歯部では頬舌径が長いのと隣接面のコンタクトポイントから根に移行する部分も清掃性が悪く危険度が増大します。

CEJから分岐部までの距離が短く歯肉の退縮が顕著だったり、4〜5mmのポケットがあると病変の危険度が増大してきます。
左図の抜去歯はエナメル質が分岐部に入り込んでいます、その部分は繊維性付着してないから一段と危険性の高い部位です。

ここで初めて技工に関連する診査項目がでてきました。
先に述べたように他の歯牙より少しの病変が取り返しのつかない状況に陥ってしまうのが分岐部なのです。
したがって、例えばオーバーハングを避けるために審美を犠牲にしてでも清掃性を考慮された補綴物にしなければなりません。

下記は補綴物の外形を回復するときの注意事項です。
補綴に至った原因
=清掃性を考慮
マージン設定位置が分岐部に近い場合
=オーバーハングしない
付着歯肉の幅少ない
=ポンテック頬側基底部注意
支台歯形成に分岐部の形態が表われてる
=支台形態と相似形に

B 硬組織の診査
6.X線診査 (どなたかこの診査項目に画像と解説をお願いできないでしょうか)2-3
  歯肉に覆われて直接見ることのできない歯根、歯根膜、歯槽骨、骨梁などの状態をX線写真で読み取り治療計画や術前・術後の比較ならびにメンテナンスにも利用できる価値の高い診査項目です。
   
  読影 垂直性骨吸収
水平性骨吸収
歯根膜の拡大
歯槽硬線の消失
歯根の吸収
根分岐部の骨吸収

7.咬合診査 
 

咬合診査には個々の歯牙の位置異常や形態異常の診査もあります。ここでは上下の咬合状態による歯周組織への影響を簡単に解説します。
つまり咬合と歯周組織の関係で咬合理論無くて語れなく、逆に歯周組織を知らずして語れない重要な診査項目です。
まず歯周組織が健全であっても異常咬合圧がかかると貧血を起こし→血行障害→酸素の代謝障害のメカニズムで歯槽骨の吸収や動揺の原因になることがあります、これを(一次性咬合性外傷)といいます。
次に正常な咬合圧であっても歯周組織に炎症があると同じような症状が現れます。(二次性咬合性外傷)
X線でクレーター状(垂直性骨吸収)の骨欠損があれば、まずは咬合性外傷を疑います、でも一次か二次かを判定することはとても困難です。多くは歯周炎と咬合性外傷が合併していますのでスケーリングや咬合調整で症状を(炎症や動揺)軽くすることができます。
他に咬合平面や被蓋および上下咬合関係もスタディーモデルにて診査いたします。


C その他  
8.プラークスコア  
左図はオレリーのプラークスコアレコードです。
PCR(Plaque Control Record)
1歯を4区画(頬側・舌側・近心・遠心)に分け染め出し液を使ってプラークが付着している部分を赤く塗りつぶしてスコアを計算します
スコアは
プラークの付着歯面数÷(残存歯数×4)×100=プラークスコア%
プラークスコアを25%以下に保ち定期的にプロケアを受けることで虫歯や歯周病を抑制することができます。

9.動揺度  
歯牙の動揺度はピンセットを使って歯を揺らしてみて、その動きの程度で0度〜3度の範囲で区分けする診査です。
重症になるほど歯周組織の破壊や歯槽骨の吸収が起こっていると想像できます。
動揺度 動揺の様子
動揺の量
 
0度 生理的動揺のみ
0.2mm以下
 
1度 ごく軽度に動揺するもの
0.2mm〜1,0mm
 
2度 中等度に動揺するもの
1.0mm〜2,0mm
 
3度 唇舌・近遠心・垂直方向に動揺するもの
2,0mm以上