(1)齲蝕のメカニズムとリスク
(2)食生活とブラッシング
(3)齲蝕予防(フッ素・シーラント・キシリトール)
 

超かんたん技工に必要な虫歯予防学(1)

ここでは齲蝕と予防について解説いたします。
私自身患者さんと直接接することも少なく、形態やシェードの希望を伺うことがあっても虫歯や予防でお話しすることは滅多にありません。やはり歯科医療に携わる者として患者さん以上の知識を持ち合わせることは使命と思いますので、無知な私ですが簡潔にまとめて説明したいと思います。
”技工に必要な虫歯予防学”の前にクイズを出します、全問正解されましたらお読みになることはありません。
第一問 虫歯菌は他人に感染しますか? Yes No
第二問 飲食すると歯が溶け出しますか? Yes No
第三問 シーラントとシーラカンスの違いが解りますか? Yes No
第四問 唾液は歯を再生しますか? Yes No
第五問 下の画像は齲蝕ではない? Yes No
この画像は歯科評論2000年6月号の”臨床に新分野を拓く再石灰化促進療法”
柘植紳平先生の論文より引用いたしました。
このホームページでお借りしたのはこの1枚限りです、このような症例を用意できませんでしたので・・・
  答えはこのページの最下部にあります。
齲蝕のメカニズムとリスク  
メカニズム
口腔内に滞留するプラークには必ず細菌が存在し、その集まりをバイオフィルムといいます。細菌には好気性細菌と嫌気性細菌に分けられ、好気性細菌は酸素の供給が必要で歯冠部や裂溝に存在し齲蝕の原因菌とされています。嫌気性細菌は空気が存在しない状態で生存することができる細菌で、歯肉溝に生息し歯周疾患の原因菌とされています。
つまりプラークが存在することは、歯周組織にも悪影響を及ぼし歯面では虫歯菌に栄養(食物の糖)が補給され、糖が分解され酸が発生し、エナメル質を脱灰状態にします。この脱灰がすなわち齲蝕の始まりなのです。
しかし脱灰状態でも再石灰化する時間が早く、PHの限界を越えなければ齲蝕のリスクが少なくなります。
唾液の量の多い人や、唾液の質酸を中和する働きの強い人は再石灰化が早く齲蝕になりにくいのです。
上の赤文字は齲蝕予防に大きく係わっていますので記憶に留めてください。
・虫歯菌
・食物の糖
・再石灰化する時間
・唾液の量と質
もし技工士が作るクラウンやインレーの適合が悪ければ、エナメル質が削除され弱体した歯には格好の虫歯菌の住処になってしまいます。即座にセメントが溶解し二次カリエスが発生してしまいす。これはギザギザプレパレーションやギザギザクラウンも同じでプラークの蓄積を誘発して二次カリエス+歯周炎とトラブルを順次発生させます。折角の保存修復が不適切な破壊治療という評価になってしまいます、気をつけましょう。
バイオフィルムとは
  口腔内においてブラッシングしていても届かない所では細菌が集まって膜を形成し、その中で増殖していきます。この膜は簡単には破壊できず機械的に除去するしかないのです。例えば朝起きたときに歯の表面がぬるぬるしてるものもこの一種で、これらがバイオフィルムと言われています。食事後は素早くブラッシングし就寝前にも洗口を行うことをお勧めます。一度形成されると取り除きにくくなりますから定期的に歯科医院でのプロケアも必要になります。

リスク判定  
 

ブラッシングが不十分でも齲蝕になりにくい人や丁寧に行っていても進行してしまう人がいます。虫歯は感染症とも言われていますが、他の条件を抑えることで予防することができるのです。
このリスク判定ではそれぞれの生活習慣や細菌数および唾液の検査で危険度を知ることができます。下記の8項目を記入したレーダーチャートを参考にご自身のカリエスリスクを知り生活の改善に勤めます。

  1.ミユータンス菌の数
2.ラクトバチラス菌の数
3.飲食の回数
4.プラーク(歯垢)の量
5.フッ素の使用回数
6.虫歯の経験
7.唾液の質と量
8.唾液の緩衝能
内側にマークされるほどカリエスリスクが高くなります。  
 
答え: 全てYesです。 写真はフッ化物塗布で5年経過後も齲蝕が進行していない症例  

 


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