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Communication Chart                    2009.1.9
 

インプラント修復ではドクターと技工士の間で完成補綴物のイメージに違いがあり、論争やトラブルの火種になることが多々あるようです。
そこで以前上記のような ”Communication Chart ” なるものを作り両者のイメージ一の致を図ろうと試みたこともありました。
しかし、ドクターと意見交換しても明快なる回答が得られず、数年間頓挫していました。
ところが、1月号のQDTとザ・クインテッセンスにその回答になるような記事が載っていましたので、改めて皆さんにお見せして、さらに発展したCommunication Chart にできればと思い、ここに載せてみました。
訂正・追加などして完壁なものができれば嬉しいです、どなたかチャレンジしてください。

尚、Dr.高山基晋氏の論文で、届いたばかりで一読しただけですが今までの疑問を解消してくれそうです、さあー読破しましょう。
 
Communication Chart
 
the Quintessence×QDT 新春合同企画          2009.1.29
 

クインテッセンス出版社より発売された雑誌に新春合同企画なるコーナーがありました。
タイトルこそ違うものの月刊二誌に著者同一で、互いにLINKしあった論文が掲載されています。
ザ・クインテッセンスからは「下顎臼歯部欠損症例におけるインプラント治療指針」について臨床例を基に検証しています、一方QDTからは、「歯科医師+歯科技工士で考える歯の位置と咬合面形態」をテーマに、診断・治療の手順を整理しインプラント補綴に応用しています。
今まで見かけない新しい企画で、未知へのチャレンジに応援の意味も込めて、ここで取り上げました。

Journal Review
尚、先日Dr高井論文を一読して、Dr.Tec間のコミュニケーションチャートなるものを提示した経緯もあり、ザ・クインテッセンス及びQDT 1月号の論文を追読し、感じたことをここに記述いたします。
著者が推敲を重ね書き上げた論文を、短時間の斜め読みでレビューを書くのはいかがなものかと、しかしその内容が日ごろの疑問や不安を解消してくれそうなので、是非同じ悩みをお持ちの方にも読んでいただきたいと思ったためです。
以前、当サイトでも下記のような症例で問題を提起しましたが、その疑問の解決策を未だ見出せないまま現在に至っています。

悩んだが・・・多くを学んだ        2008.5.21
プロビを作れば悩まないはず    2008.11.9


感想を述べる前に、生体内において天然歯とインプラントの存在様式の違いと位置について整理してみましょう。
天然歯とインプラントでは @歯根膜の有無 A粘膜の付着様式の相違 B根サイズと歯根数が違い、それらの条件下ではインプラント治療に不利な環境になってしまうのは当然である。
つまり@Aの相違は歯の周囲の生体防御反応システムで、インプラントのサーフェスに関連し、この差異は研究者やメーカーの開発に委ねるとして、Bの根サイズと歯根数の違いは術者の技量で成否が分かれるのである。
単根の小臼歯などでは歯根径とインプラント径に大差なく、極端に天然歯と違ったクラウンフォームにはならないが、大臼歯のように複根歯やさらに骨吸収を起こしている顎骨では、インプラントサイズが限定され、そこを埋めるためには固有咬合面までのフォームが不自然になってしまう。

次にインプラント埋入ポジションは顎骨の何処かに施術されることになるが、その位置は@埋入深度 A埋入角度 B近遠心的位置、と三次元の最適なポジションに埋入されることになる。それを決めるのは、残存歯槽骨の状態や解剖学的配慮そして対向関係やDr.Tecの提言によるのである。それらを考慮しなくて外科主導か補綴主導かを選択できない。成功のシナリオは一方を優先するのではなく、両者が調和してこそ成立するのだと確信している。



さて、Dr高井氏の論文は大臼歯欠損のインプラント修復に焦点をあて、上述の解剖学的相違の「B根サイズと歯根数」、埋入ポジションの「B近遠心的位置」に拘って、臨床から導き出された仮説を検証し、理想のクラウンフォームや埋入位置を模索している。
特に大臼歯では歯根数の多い天然歯と、単独で埋入されるインプラントでは同じ欠損空隙でもインプラント修復では不自然なクラウンフォームになるのも無理もない。
それを解決するための方策として症例によってダウンサイズしたり、矯正や埋入位置を変更して、対合関係や歯周組織との調和を検証している。
通読して論文から読み取れることは、氏は予知性の高いインプラント治療を目指すには「安定した咬頭嵌合位と臼歯部離開」が重要で、それには対合歯とカスプフォッサ(咬頭対窩の関係)を構築することが必須で、特に近遠心の埋入ポジションの設定は補綴主導であるべきだと言っている。
勿論、解剖学的な配慮や垂直的骨量は診査・診断時に考慮された上での検証であって、その上で歯周組織との調和も図っている。
その結果、氏は対向関係にもよるがイラストで数種類のバリエーションを提示して、カスプフォッサを堅持し将来のメンテナンス不足を解消しようとしている。 実際、欠損様式はそんなに単純ではなく、多様な欠損形態もありこの手法をベースにしてアレンジできそうである。
巷では盛んに補綴主導と言われているが、外注技工所の多くは対向関係も考慮されず埋入され、印象のみ渡されて情報の無いまま上部構造のクラウンフォームを模索しているのが現状で、それでは決して予知性の高い修復はできないであろう、
診査・診断時に理想をイメージし近遠心的埋入ポジションを決定するには、やはり診断用ワックスアップは不可欠で歯科医師と歯科技工士の情報交換なくしてインプラント治療は成功しないと痛感した。



次にQDTの論文について述べさせていただきます。
謝辞に錚々たる先生方のお名前が連なっていて、その論文に対してレビューを書くのは命知らずと言われるかもしれませんが、乗りかかった船座礁するも覚悟の上で記載いたします。
ページをめくると当初は総義歯の論文かと思いきや読み進んでいくと、咬合面形態、インプラントと広範囲に渡った論文で、著者の懐の深さを垣間見た気分です。
特にインプラントに興味がある私ですが、先にザ・クインテッセンスを読んでいたため「咬合面形態と咬合調整」のコンテンツに惹かれました。
前述の「安定した咬頭嵌合位と臼歯部離開」がここでは詳細に説明されていて、咬合面形態が “安定した咬頭嵌合位”を構築し、その上でスムースな “臼歯部離開” が達成されるように心がけること。 敢えて “安定した” と付け足してあるところに、普段の咬合面形態とは違う点を強調してある。
時として逃げの咬合面形態を作る当方に、隆線の一本、オクルザルコンタクトの一点の意義を諭していただいているようで心が引き締まる思いでした。
次は “咬合調整”   ん〜〜 どこかで見たようなタイトル、非常に気になるコンテンツ
当方とバッティングするタイトルで、じっくり時間をかけて読み込んでみようと次のページを捲ると、インプラントのコンテンツに・・・
ならば 、参考文献にもっと詳しく解説してあるだろうと ザ・クインテッセンスを2冊読みました。
その内容は当方の臨床レベルと格段の差があり、ミクロの世界で理想を追い求めている著者に敬意を表します。実際の臨床例も掲載されており その繊細な“咬合調整”の奥義は、歯科医師と歯科技工士が共通の知識と認識を持ってこそ達成されるものなのだと納得いたしました、有難うございました。
 

ただ残念なのは、緒言で「天然歯を模倣し、天然歯の優位性を説いている」のに、「総義歯から学ぶものが多く補綴治療の原点だ」と断言されては戸惑うばかりです。
やはり緒言で書かれているように天然歯・歯列が我々の目標とするべき修復形態で、それを基本として経年変化をさかのぼるのか、進行を抑えるのか選択すべきで、決して総義歯がお手本ではないと信じます。

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両誌を読んでの感想でしたが、どちらか一誌しか購読していなければ、この連携があまり意味をなさないような気もします、事実QDTのみを購読している方に感想をお聞きしても著者の意図が伝わらないと言っていました。
試みは新鮮でチャレンジ精神は評価しますが、非常に難しい企画だったように感じました。
以上、何度も読み返してみると鮮明な画像、表現力、適切な語句が使われており、結果私には短時間で理解できる内容でした。これで歯科医師と少しハイレベルの会話できることでしょう、感謝いたします。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
最後に、当方からこの企画に、ささやかな提案をしてみたいと思います。

→ザ・クインテッセンスに


→QDTに
上記のようなシンボリックな画像やページを、互いにサムネイルで掲載しておけば、一誌のみの購読者でも他誌に興味がそそられ、目的も達成できるのではないでしょうか?
皆様もご意見・ご提案などがありましたら、直接連絡してみては・・・
 
 
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