きょうの臨床
 
悩んだが・・・多くを学んだ                  2008.5.21
 

欠損数は3本だが、ワイドインプラントを2本埋入された症例です。犬歯は反対咬合で内側に傾斜しており臼歯部に移行するにはフェイシャルカスプラインが崩れ、とても難しく掲載をためらいました。しかし、埋入本数、埋入位置等に今後改善するべき提案をしたく掲載いたします。
ドクターサイドに立つと残存歯から離して埋入したい気持ちは十分理解できるが、近遠心的な位置は咬合面形態よりもサブジンジバルカウンツァー(SGC)側に大きく影響すると考えられる。
つまり近遠心の埋入位置は、時としてセルフケアしにくい形態になってしまうということである。
インプラント体のプラットフォームから隣在歯コンタクトポイントまでを、どのように繋ぐかは技工士に任せられているが、装着後のメンテナンスを考慮しないで製作されたならlongevityに不安を残すことになるであろう。


さて、上記で問題になるのは、インプランのプラットホームと隣在歯のコンタクトポイントまでの高さ(H)と近遠心的な距離(D)とがSGCの角度を決定してしまうのである。Hが多くDが少ないほど清掃し易く、数値が逆転すれば清掃しにくいと思われる。したがってインプラントを埋入する近遠心的な位置はHとDの関係を考慮して決めなければならない。勿論そこには生体を維持していく上で確保しなければならない骨幅を配慮した上での話である。

では現症例で改善すべき点はどこなのか?
矢印のように2本のインプラント体を近遠心に移動しブリッジタイプに移行する。すなわちインプラント体から立ち上がる角度を強めて接触する粘膜を少なくすることで、周囲粘膜のボリュウムの保存を図る。粘膜にボリュウムがあるほど新陳代謝が行われ抵抗力が増すと考える。またコラーゲン組織の締め付けでプラークの進入も防止できると勝手に想像している。

コンタクトポイントから出発したラインアングルに理想のSGCを与えると、インプラント体の埋入位置(プラットフォームの位置)が決定され、それが咬合面の近遠心幅を決定すると言ってもよいのではないだろうか?


今回、上部構造を製作するにあたり、4番近心部のSGCに不安があり、清掃しやすい形態を確保して近心部に隙もどきをエクステンションするように製作した。


タフトブラシと相似形にして入りやすくしたが、舌側までは届くはずもなく 歯間ブラシは必須になる。


なるべく1本のサイズで終了するようにしているが、SGCの形態に影響され難しい。それでも4番近心は開放したことで清掃しやすいように思われる。



今回お見せするような症例ではなかったが、今後の記録のために残しておきます。
明日、装着を見てきますから感想をお知らせいたします。
 

装着に立ち会ってきました。
CT画像ではガイドパイプが等間隔に並んで理想な埋入位置に見えるが、診断用ワックスアップは2歯でステントを作られたようです。メンテナンスや上部構造の形態、咬合関係も考慮すると、やはりそれぞれ残存歯側に移動したほうが理想的な上部構造になったと思われる。
約 1.5mm移動すると3本のブリッジタイプとなり、4番近心や6番遠心の不自然な形態は回避できたことは間違いない。
今回は患者さん、衛生士、ドクター、技工士4者の議論の末 3対1で4番近心に歯間ブラシの通るスペースを設けたままスクリュー止めになりました。その理由は他の2箇所を歯間ブラシを通し4番近心部にはスーパーフロスを使う煩雑さに患者さんが拒否反応をしたのが決定的でした。
反省
骨質がよくないがボリュームもあり安易に進めたことや、プロビで検討することもなく一気にファイナルへ進んでしまったことは反省しなければならない。
今後
欠損スペースや配置する歯牙形態、コンタクトからプラットフォームまでの距離と高さなどから近遠心の埋入位置を決定できないか。
それぞれの数値をソフトに入力すれば簡単に割り出すことができるように思いますが、難しいかな・・・
 
 
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