Let's enjoy mathematics                   2008.1.16
 
QDT2008年1月号 ITIインプラントの説明後半にソリッドヘッドについてにワンポイントアドバイスが投稿されています。
口腔内に装着されるソリッドアバットメントと比べアナログが約0.2mm高くなっているとあります、最近アナログやプラスチックコーピングを使わないので、また在庫が無く正確な計測できませんが、高さに差のあることは承知していました。
そこで、問題になっているバイト材が乗らない現象について、数学的に原因を探ってみようと考えました。

(パーツの寸法公差の範囲が広いのか、或はソリッドヘッドのインターナルテーパー部分にトルクのかかり具合でヘッドの位置が上下するのか、全てはソリッドヘッドの停止位置がことの事の始まりだと考えます。)ただしソリッドヘッドのみ

上記のように超ぷちに書いた2つの要因を推測してみましたが、詰まるところ一つの要因に集約されパーツの形態に、リスク回避のための公差を設定するしかなかったと思われます。
テーパー嵌合は緩みにくいコーヌス効果を発現させる大きな特徴ですが、逆にそれがテーパー嵌合に由来する避けようのない部品の位置関係に狂いが生じるのだと考えます。
それがネックになって投稿のような操作が必要になってくるのだと思います。

では問題です。
ソリッドヘッドの嵌合するテーパー部を最大径Ф4.0とし、そこから8度のテーパーで細くなっていると仮定します。
次にインプラント体に開いているテーパー部分も、最大径同じФ4.0で8度のテーパーとします。 両者をはめ込んでストップしたところを仮に原点としたら±0.1mm以内に収めなければならないと言うことになります。(高さに0.2mmの差があるとしたら)

総量0.2mmの誤差の範囲内に収めるには、両者のパーツ最大径部分の許される最大値と最小値の差は何mmでしょうか?

Ф4.0±寸法公差の数値を求めてみましょう。
tan8 °=0.1405
sin8 °=0.1392
cos8 °=0.9903

例えばФ4.0±0.102のように小数点3桁まで。

皆さんも考えてみてください。頂上で0.2mmでも寸法公差に面白い数値が出てくるかも・・・
解答が判明しましたら超ぷちに書き込んでください、私自身は計算に自信がありません。
最初の正解者にはメインページを一週間お貸しします(論文・CM等如何様にでも)。♪

 
寸法公差の解答とStraumannインプラントへの対応         2008.1.18
 
間違いや修正がありましたらお知らせください。
上記インプラントにおける真正ソリッドヘッドアバットメントとアナログに約0.2mmの高さの違いを検証すべく、またまた独断的な考察と対応方法を考えてみたいと思います。
特にソリッドヘッドを採用した場合、印象用キャップを使いアナログを挿入して模型を製作したときから、上記の誤差が発生してきます。
それが実際に我々の作業に影響するのはマウント時、アナログにバイト材が戻らないと言う現象で現れてきます。
そこで、何故誤差を生じさせているのか、またその差は現実に何を補正しようとして与えてあるのか知りたくて、0.2mmから逆算してインプラント体とアバットメントの嵌合を理論値から計算してみようと、先日の問題提起となった訳です。
パーツ各部のサイズは公開されているはずもなく、切れのいい数値を設定して検証しました。
 
解答

0.1405(tan8°)=X/0.2mm 片側0.0281 両側0.0562

  
答え Ф4.0±0.0281


第一の要素、パーツ製造時に許されるバラツキは+0.0281mm〜−0.0281mmの範囲以内でなければ誤差の0.2mmを越えてしまうので不良品として扱われていると考えられます。
但し開発設計者はインターナルの部分は強度に影響するからプラス公差にはしないであろう、よってインプラント体にはФ4.0−0.0562と小さくなるように設定していると思われます。
また、アバットメントにはプラス公差を設定してФ4.0+0.0562誤差を設定し、歯冠側方向に誤差を統一するように製造されているのではないでしょうか?
0.0562mmとは56ミクロンでGHMの咬合紙に換算すると4枚強の厚さになります、両者のパーツ製造時に0.0562mm以上の誤差も許されないのは厳しい規格とは思いますが・・・

もし第一要素の寸法公差が±0としたら

第二の要素としてアバットを固定するトルク値の微妙なバラツキも、インプラント体の回転で頂上の位置に誤差を生じる要素が潜んでいます。
ただ数値的に表現するにはデータがないので判りませんが、スクリューのピッチによっては大きく影響してくることになります。
もしピッチが1mmだと仮定すると1°の回転変位で0.003近く上下します、10°で0.03上下してしまいます。
上記2つの要素 をアバットメントの高さで調整するのであれば、テーパー部の寸法公差は、もっと狭い範囲内に収めなければなりません。

他にテーパー部分の表面精度を表現する記号に▽▽があります。
それは 表面仕上げの程度を表すもので、その表面粗さやうねりがトルクに影響を与え若干の位置変位を生じさせることも考えられますが、これ以上は私の及ぶところではありません。

それはそれとして、何故一般ユーザーに告知してくれないのでしょうか?

技工作業で模型にバイト材が戻らないとは、今までの作業ステップでテクニカルエラーが発生したのかマティリアルの変形等を疑い、再印象や再咬合採得および再度模型製作している方もいるのではないでしょうか。(私です)
一方メーカーに問い合わせる方も存在するのではないでしょうか?(私です)
挙句に、バイト材を介さずに咬合器に装着され、折角作った咬合面形態が削られたり低かったりと、互いに無駄な時間や労力をかけて、最後は両者間に後味の悪いものが残ってしまうことになります。
 
対応策を考えてみました (2提案)
もちろんカスプデンタルサプライの黒田恭行さんがアドバイスされてる方法も正確にマウントできますが、他にも対応策がないか考えてみました。
この提案はあくまでソリッドヘッドアバットメントを採用し、印象用キャップを使ってアナログを挿入したときだけです、一方シンオクタヘッドやインプラントレベルの印象ではこの様な問題は発生しないと考えます。

その1
印象用キャップを使って印象されたものに、アナログを挿入しマニュアルどおり模型まで製作します。
咬合採得時にプラスチックコーピングを口腔内のソリッドヘッドに挿入し、そのプラスチック上で咬合採得していただく。それをラボサイドに戻してマウント時に利用する。

その2
Straumannのマニュアルに記載されている”ヘッドをプレパレーションした場合”の操作に準じてヘッドを削合してなくてもその方法に従う。つまりネック部分はショルダーアナログピンで再現しヘッド部分は印象された面に石膏を流して口腔内のヘッドの形態を再現します。

但し上記の2方法は未だ試したことがありませんが、上手くいきます、いけそうです、いやいけるはずです、多分!!採用はあくまで自己責任で。
 
最後に、この独断的考察は茶々丸さんが書き込まれているバイト材を云々言っている訳ではありません,それ以前の口腔内と模型のギャップがある点をクローズアップしてるので、バイト材の寸法精度やその方法論を検証しているわけではありません。

ぴんぽんまんさんや茶々丸さんの言うように咬合採得法やバイト材の選択は、完成物に大きな影響を与えますし重要なステップは承知しています。

2人の超ぷちのコメントには共通した言葉が裏に隠されているように感じました。
そのキーワードは”バイト材の寸法誤差”で表現していいのではないでしょうか?
例えばバイト材の変形率を1%と仮定すると10mmの厚さでは0.1mmも変形しますが、2mmの厚さは0.02mmしか変形しないのです、したがって茶々丸さんの最後のコメントは的を得たものです。
そのため 、黒田恭行さんのアドバイスにもこの”バイト材の寸法誤差”が関連するので対応策を提案してみた訳です。
ただし、バイト材のみを重視して無調整技工物が仕上がるとは思っていません。

バイト材の寸法誤差より他にクリアしなければならないことが多いと考えています。
人は目の前 の壁をクリアしてこそ前に進めるが、一つを乗り越えても必ずその先には別の壁が立ちはだかります、頂上に到達するには確実に一歩一歩前進していくしかないのです。
今回はその一つの壁を乗り越えるべく考察で、今後も咬合採得・バイト材・作業模型・対合歯及び咬合器等と難易度の高い壁が待ち受けています。
一人で最高峰に挑戦するよりも大勢で知恵と工夫で助け合い、踏破していくのがこのウエブサイトの目的です。これらのコンテンツを踏み台にして壁を乗り越えてもらえれば光栄です。
終了


当方掲載したことすっかり忘れていました、2007.1.24の「今日のお仕事」でこの件を少し解説していました、閲覧者の方からご指摘があり思い出しました。
掲載以前の2004年ころに 、友人やメーカーに問い合わせるも、問題にされずこの症例では現象と自分なりの対策を記しただけだったと記憶しています。
読み返してみると幼稚でつたない文章、恥ずかしい。  2008.1.22
 
   
      
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