ASTRA Pertsの検証                         2010.6.30
ヒーリングアバメント”ZEBRA”を咬合採得用パーツに流用できるだろうか?
現在のインプラントは天然歯の形態を模倣したスクリュータイプが主流で、いずれにせよインテグレートにおいては基本的には同じような考え方で各社共通の概念を持っていると思われる。
しかし、インプラントとアバットメントの接合に関しては各社まちまちで、当方のような外注ラボでは、その多様な接合形態によって思いもよらぬトラブルに見舞われることもしばしばあり、新規メーカーのインプラントを受注したときは細心の注意を払うよう努めている。

このアストラインプラントは3症例目で完全にラインナップを熟知している筈もなく、パーツの特徴も把握してはいなかった。しかし、今回思いもよらぬトラブルに見舞われたので、ここでその原因を追究し今後のトラブル回避に繋がるように実験をしてみました。

実験に関してどうしてもラボサイドで準備できないものもあり、アストラテック営業の”宮脇さん”にお願いしてハンズオンで使っているインプラント体(実物)やフィクスチャーインプレッション等をお借りいたしました。
当方の希望を快くお受け頂きました宮脇さんに感謝いたします。

トラブルの詳細
中間補綴や大型の補綴は別として遊離端のインプラント補綴では、印象採得時に咬合採得するか或は模型が完成してからバイト用テーブルを作成して 、改めて患者さんに来院してもらう、の2方法がある。
いずれにせよ、印象時に咬合採得できれば来院回数を少なくできるし、またバイト用テーブルを作成するにしても参考にできるのではないだろうか。そこでヒーリングアバットメントゼブラをインプラント体に挿入して、その頭頂部で咬合採得していただければ咬合器マウントも容易で、次回には上部構造を装着できるのではないかと目論んだのである。というのもヒーリングアバットメントゼブラは全てのインプラント体に対応でき高さにバリエーションがあるためである。

しかし今般、咬合採得したヒーリングアバットメントゼブラそのものを模型に入れて、シリコンバイトをあてがってみると両隣在歯より高い位置に頭頂部がきており、明らかに口腔内の位置とは違っておりました。
つまり、模型上のヒーリングアバットメントゼブラの位置が口腔内の位置より浮いているということです。

実験方法
通常、トラブルには何らかの原因があるはずで、ドクターサイド・ラボサイドのエラーも考えられるが、その前にASTRAインプラントのパーツのラインナップやその特徴を知るためにも、一連の操作をラボサイドで再現し現状を把握してみようと考えました。(実験のイメージ図)
お借りしたインプラント体、ヒーリングアバットメントゼブラ及びフクスチャーインプレッションを使い、咬合採得、印象、模型製作までの高さの変化を出来る限り数値で追ってみました。


まず、インプラント体のプラットホームを同一平面にするためワックスにて平面板に固定しました。
その平面板の軸をサベーヤーに取り付け


(埋入)
インプラント体をトレーレジンに埋め込みました。
周りには隣在歯を模倣できるようにネジを垂直に埋めました。このネジはドライバーで簡単に上下するようにしてあります。お借りした3本のインプラント体のうち左端の1本はSTではなく、その上フクスチャーインプレッションがST用しか届きませんでしたので、右2本のテーパードインプラント(4.5ST and 5.0ST)しか精度実験ができませんでした。


(咬合採得)
2本の テーパードインプラント(4.5ST and 5.0ST)にヒーリングアバットメントゼブラをねじ込みました(規定のトルクではなく、手指で軽く)。
計測したところ左側が0.02mm高い状態でした。その後両端のネジのヘッド部を調整して4本全てがおおよそ等高になるよように設定しました。


(印象)
その後、ヒーリングアバットメントゼブラをフクスチャーインプレッションに入れ替えてネジ止めしました。
プラ板にフクスチャーインプレッションが入るように穴を開け、プラ板がネジヘッド部に安定するように置き、フクスチャーインプレッションをパターンレジンで固定しました。
これで印象時の口腔内と同じ操作をしたことになります。


(模型製作)
高さを測定するためにプラ板をサベーヤーで垂直に引き上げました。 その後フクスチャーインプレッションにはフクスチャーレプリカ(手指で軽くネジ止め)を、両端には隣在歯の高さを模倣するパーツ(DIYのもの)をワックスで固定しました。


それを石膏に埋め込むことで作業用模型を製作したことになります。その後ヒーリングアバットメントゼブラ(手指で軽くネジ止め)に入れ替えて、目視で隙間を確認すると、僅かに隙間が見られました。



(計測)
4本には最大0.13mm(130μ)の差が生じました、ゼブラ同志には差がありませんでした。初期に0.02mm(20μ)の差があったが、臨床上全く問題ない数値だと思われます。つまりパーツの寸法精度は非常にシビアに製造されているように感じました。

(結果)
咬合採得にゼブラを採用するには以下ことに注意が必要のようです。
1) ゼブラ上で咬合採得した場合は、印象と同時に現物をラボサイドに送ること。
2) アストラ製品には厳しい寸法公差が与えられているいるようだが、フクスチャーインプレッションやアバットメントがテーパーであるためバイトが多少上下することを考慮して完成に至ること。
3) 今回の症例は埋入が深く、小臼歯であったためプロファイルヒールアバットメントを使うのは形態的に気乗りがしなかった。つまりゼブラのほうが後の形態に自由度があるように思われたため、二次オペ後にプロファイルの代わりにゼブラを入れました。
その結果、ゼブラは直径がフクスチャーインプレッションより0.5mm細く、歯肉の締め付けでフクスチャーインプレッションが最後まで落ち切っていなかったと考えられます。
以上、当ラボにある簡単な機器を使用して出来る限り公正に実験してみました、ただ実験本数も少なく検証の正確性にも自信がありません。
ご意見やご批判、追加などがございましたら、”超ぷち”にお願いします。
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