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”ラボサイドからインプラント技工を考える”歯科技工1月、2月号を読んで  2009.3.4

 
先日”超ぷち”において小田中先生より上記の論文に対する意見を求められていましたが、
当方のレベルは審美技工とはかけ離れており、豊富な知識と高度な臨床に意見を申すことが憚られると思い控えていました。
ただ、”はい”と軽率にも答えた手前、強迫観念に駆られて遅まきながら書いてみました。私事ですが、最近体力不足が顕著で日曜の負荷なしに、技工作業が続けられない状態であったのも、遅れていた理由の一つです。
 
さて、インプラント技工に携わって30年近くなるが、疑問は歳月が流れるごとに増していき解決の糸口が遠のくばかりです。特に今までの修復とは違い歯根から立ち上げていくインプラント治療は、ドクターとテクニシャンの意思の疎通なくして、完成度の高い修復はできない。それには、診査・診断から歯科技工士が参画して歯科衛生士も交えて治療計画をたてるシステムを確立されていないと、その皺寄せは患者さんが被ることになる。
 
さて、詳細に読んでみると下記のような要旨で語られている。
@インプラントと天然歯の生物学的違い
A歯間乳頭と歯槽骨の生物学的関係
B粘膜貫通部の形態とマクロギャップ(上部構造のマージン)の位置
C下部鼓形空隙を塞ぐ方法
 

@インプラントと天然歯の生物学的違い
抜歯された欠損部位には不可逆的なマイナス要因が存在し、その多くは最終上部構造の形態に影響を与える。筆者は、それらをインプラントの”性”と捉え、その克服する術(すべ)を技工士の立場で解説している。
その”性”はエマージェンスプロファイルや歯間乳頭のフォームに連動しており、修復する部位の特異性を把握して、上部構造のフォームを模索しなければならないと解いている。
図説や画像を多く取り入れ、臨床例を提示して詳しく解説してあるので、是非熟読していただきたい。
ただ、その”性”を縮小してくれるのは3Dインプラントプレスメントであって、外科主導の埋入もあって然るべきだが、上下咬合関係を無視して埋入された修復は困ったものであると、技工士の立場から強調して欲しかった。


A歯間乳頭と歯槽骨の生物学的関係
上記の関係は互いに連動しており、歯槽骨があればそれを覆う粘膜が存在し、患者個々の特性もあるが骨幅があればそれに付随して粘膜もボリュームを獲得するのは自然の摂理である。
著者は歯根間やインプラント間の歯槽骨の幅や高さ及び形態に着目し、歯間乳頭の再生位置を予測して修復物の下部固形空隙を決定している。
そこには、歯周組織の反応を予測する著者の、鋭い観察眼が臨床画像から推測される。
当方のような外注ラボではBioTypeはおおよそ推測できるが、歯槽骨の高さは想像しがたく、それに変わる模型の断面図から導き出す方法は興味深かった、しかし実例で解説されていなかったのが残念であった。
3月号で実際を見ることがでるのかもしれないが…、未だ届いていないので、楽しみだ。

B粘膜貫通部の形態とマクロギャップ(上部構造のマージン)の位置
上記も”性”が問題点として浮き彫りになる項目である。
天然歯とインプラントでは @歯根膜の有無 A粘膜の付着様式の相違等で、天然歯よりも厳しい条件になり、貫通部の形態が血流やメンテナンス不足を招いたり、マクロギャップの位置がセメント除去を困難にしたりバクテリアの温床になる可能性を秘めている。
実際マージンの位置が深いほど形態の自由度が増し”性”を縮小できるが、記事にもあるように「経験と慣れが必要」とあるので当方は勧めないであろうし、合着時の唾液コントロールやセメント除去に不安が付きまとうのは、私だけであろうか。
随所にイラストが挿入されているが、医歯薬内でドローしたのか知る由も無いが頂けない。
素人の私が描いても、下記くらいのものは描けるはずであるが・・・。
小田中先生ごめんなさい、悪いのは私です。  ┏○ 申し訳ございません

 
C下部鼓形空隙を塞ぐ方法
最後に技工士の技量で固形空隙を塞ぐ5つの方法を実際の臨床例で解説してある。
どの症例を見ても素晴らしいセラミックワークで修復部位が特定できなく、インプラント修復なのかも判らなかった。
また全ての症例でインプラントの”性”をも消滅させており、著者の並外れた技術力と学識が、高いハードルも容易にクリアさせるのであろう。
願わくは“メタボ”の解消も実践されることを祈るばかりだ、おっと横道に…
 

院内ラボに近いバーレンと行田歯科医院の関係では、下部鼓形空隙を塞いだ患者さんに薦めているメンテナンスグッズやセルフケアの方法、プロケアのメンテナンンスプログラムなどに関心を持ったのだが、ページ数も限られておりそこには触れていなかったのは、私には残念であった。
さらに単独歯と連続歯の固形空隙の大きさや形態に違いを表現するのか、その場合のメンテナンス方法に違いがあるのかお聞きしたいことが随所にあった。
インプラント技工を行っていても審美性をクリアできない当方にとって、P24のFは身につまされます。
PS:小田中さん、このレビューに対して追加・修正があれば連絡ください、早急に手直しいたします。但し、お忙しい故疑問や質問に関しての返答は必要ありません。
いつかお会いした時か、次回の論文に反映していただければ嬉しいです。
 
小田中先生から”超ぷち”への投稿文です
1)おおやまさん本当にありがとうございます。今回の論文は私の中の論文で1番長いものとなりました。なかなか人の意見も私の耳には聞こえてこなく,こういった感想は本当に感謝いたします。今回は技工士からのインプラント補綴への提案という事でテーマがボケないよう絞りました。本当はそれ以上の事は書けないからですが・・・

2)イラストは私が書いたものです。私のオリジナルは陰影はなくもっとシンプルなものです。本当は医歯薬側で付けた陰影もいらないかなと感じていました。それはあくまでも図説なのであってシンプルに解りやすくが良いかなと思っての事でした。今後もう少し考えてみます。メインテナンスは基本的に歯ブラシ1本が良いと考えています。問題はブラッシング圧です。

3)メタボ対策は実践してはいるのですが、私の先輩と対策を練らねば・・・私の論文にこのような時間、手間をかけさせてしまい誠に申し訳ございませんでした。大山さん本当に今回のコメント本当に感謝いたしております。ありがとうございました。

 
こちらこそ、失礼をお詫びしなければならない箇所もあるのに、それでもレビューに対してのコメントまでいただき恐縮しております。
 

 
                           茶々丸さんBBSにての質問                   2009.3.31  
以前茶々丸さんのBBSにて”ザッキー”さんに下記のような内容の質問を当方からいたしました。それは”ザッキー”さんの技工物に対しての感動と、その症例についての疑問をでした。

『素晴らしく丁寧なお仕事で感動しています。
ザッキーさんに一つお尋ねしたいことがります。
インプラントレベルでフルブリッジの上部構造を製作されていますが、口腔内より取り外すとき平行性のない箇所のアバットメントスクリューが、インプラント体のインターナル部分に引っ掛かり抜けなくなることはないですか?。
それに対応する何か良い方法があるのでしょうか?
当方の質問に、ご返答よろしくお願いいたします。 』




特にノーベルのリプレイスに多発するので、その原因を探ってみました。
図の左側は垂直に埋入されたもの、右側は傾斜埋入されたもので両者が繋がったブリッジと想定してください。
ABCの図は上部構造を透明にして、スクリューとインプラント体のみをハイライトさせたものとイメージしてください。

さて、ブリッジを装着するときは例え引っ掛かってもスクリューが浮き上がるだけで上部構造を適合させてから締めれば問題ないのですが、いざ取り外すときには傾斜埋入されたインプラント体のインターナル部分にスクリューのザード部分(ネジ山)が引っ掛かり抜けなくなるのです。
図Aは締結している状態ですが、それを緩めていくとBの状態になります。これでスクリューは雌部より開放され自由に上下することができます。 しかし傾斜埋入されている側ではインプラント体の中でスクリューが上下するだけで抜け切れないのです。
図Cまで上部構造が上がりますが、そこからは抜けることはありません。

C拡大図

このインプラント体は10度傾けただけです。
パーツの寸法が判らないので正確な角度を割り出すことが出来ませんが、インプラントレベルで連続歯を補綴するときは注意を要します。

では、そのような現象が起こる大きな理由は何によるものなのでしょうか?
それはインプラント体の内部の雌ネジが最上部まで無いからです。
あればスクリューが抜け切って引っ掛かることはないのです、それが証拠にマルチユニットアバットメントには最上部まで雌ネジが切ってあるのです、したがってこのような問題は発生しないのです。
つまり、インターナル・アウターナルに関係なく最上部まで雌ネジが無ければ同じような現象を起こすと想定しておくべきです。

では当方が考えて実践している対応策を・・・ 
その前に皆様も考えてみてください、患者さんを逆立ちさせるのはレッドカードです。
 
            その対応策                      2009.4.3  
皆さんはこのような現象に遭遇されてないようで、それ故体験談が少なかったのですね。
ただ問題提起した手前、当方の解決策を載せておきます。
ブリッジ脱着時にスクリューが引っかかるのは避けようがなく、それを回避するには傾斜埋入されている側のスクリューを先に抜き取るしか手はありません。

その抜き取る方法は、スクリューをピンセットで挟さんで抜き取るか、或は鳥餅みたいものを接着して抜き取るしかありません。しかし、どれも現実的に狭いスペースでは困難なようです。
そこで市販のトルクスドライバーを加工し、その解決策としました。


最近あちこちで見られるアストロプロダクツ なる工具店で精密ドライバーセット6本組(¥860)を購入し先端部を加工しました。このドライバーは先端部にテーパーが付いていて、コーヌス効果を発揮させることができる格好な形態をしています。
セットの中には3本のトルクスドライバーがあり、T4を抜き取り用に加工します、ちなみにT5はノーベルのドライバーと互換性がありますが、軸部分を細くしないとホールには入りません。


既存ドライバーを3箇所加工することになります。
@ T4を使うので当然細いのでスクリューにあてがいながら、テーパー部に接触するくらいまで先端部を短く削り取ります。
A テーパー部分の星の先端部(ドライバーの断面)を鈍角から鋭角にジスクで形態修正します(画像のように食いつくように)。
B 軸部分を細くします(ホールより細く)、軸に把持部を取り付くようにアンダーカットを付与します。
後は持ちやすいように把持部を取り付けて終了。
(注)画像のドライバーより 軸部分を短く把持部を小さくしたほうが良いように思われます。

但し予めラボサイドで、どのスクリューが引っかかるか確定しておくこと。またこのドライバーでスクリューを回転させないことをドクターに忠告しておくことが重要です。
 
 
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