きょうの臨床
 
コーヌスデンチャーリメイク              2010.11.1
8年間でこんなになるとは・・・               2010.10.4

コーヌスデンチャーがリメイクのため、ラボに届きました。
上下の内外冠はそのまま利用して、人工歯とメタルプレートそしてレジン床をやり直すそうです。
この症例の経過は最後まで掲載したいと思います。


今年4月、左上34のレジンが脱離してからは何回修理(チェアサイドにて)
しても繰り返す事と、硬質レジンの色を何とかして欲しいという、患者さんの要望もあったそうです。

蓄積データから 2002年9月に製作した上下コーヌスデンチャーでした。
8年間でこれまで哀れな姿になるのかと、唖然としてました。


しかし、その期間内で支台歯の変化は、右下5番がコーヌスからマグネットに変更されただけで、本数は減っていませんでした。さらに、リベースもされていませんでした。
マグネットになった理由は、二次カリエスになったためだそうです。
支台歯の減少がなかったことと、機能的に患者さんが満足していたことで、少しは救われました。


実は、唖然としたのはレジン床の変色の激しさでした、左が通常のレジン床の色調です。
17年前に流し込みレジンからイボカップに変更したのも、このような床の変色だったからです。
それ以来、このような変色を目にしていないので、患者さん本人から事情を伺ってきました。

結果
毎日ではないが入れ歯洗浄剤を使って、そこに10分ほど入れていたそうです。
一錠の指定にも関わらず、ご丁寧に二錠入れていたそうです。
時間が長かったのか、二錠が悪かったのか、あるいはその商品に問題があるのか判りませんが、今後は他社メーカーをお願いしておきました。
 

 
皆さんご存知かも                    2010.10.20
上方のコーヌスとマグネットのコンビネーションの上顎症例で、義歯を解体していくとマグネットが錆びているのに気づきました。
今まで、このような現象に遭遇したことがなく、どのようにマグネットをステンレスで包んで、レーザー溶接してあるのか、とても興味深深で、解体を試みました。

左がEX600W、右EX400Wです。
ステンレスの剥がれている様子では、左右のメタルと中央帯状の板の3ピースで構成され、それをレーザーなどで溶接しているようです。
未使用品では境目が判りづらいが、8年間口腔内に入っていた他のマグネットを精査してみると、同じ部分に黒くラインが見受けられます。


その中央帯状の板がはがれて、マグネットが錆びているようです。赤く囲ってある部分にシャイニングスポットが現れており欠損様式と見比べると、ここに荷重が架かっていたことが頷けます。


では、実際に何mmの板が使われているのか計ってみると、外側は120μmでした。


キーパと接触する部分は70μmまで薄くなっているようです、ただし、始めから薄いメタルを使ってあるのかは判りません。

実はマグネットの構造より、ここまで錆びてしまうと磁力がなってしまうのです、これは発見でした。
 

 
硬質レジン前装一歩手前(難航)           2010.10.27
立会い時に患者さんとお話しする機会があり、尋ねてみました。

当方  「8年間何か不都合がありませんでしたか、食べられない食品がありましたか?」 

患者さん  「うなぎ」・「さしみ」

当方即座に      「えーー」 

患者さん  「好き嫌いが激しくて」

当方   ・・・・・      
                         「じゃなくて、噛みにくいものがなかったですか?」


患者さん 「何でも食べれた」

アシスタント・当方  wwww

上顎

外冠内面は激しく汚れており、義歯清掃材より綿棒の方が有効だと患者さんに伝えておきました。
また、8年経過しても加熱して塩酸に浸せば、元の状態に戻る貴金属の有用性を感じます。


外冠とレジン床の隙間に、おびただしいプラークの進入がありました。


義歯装着7年後にレジン前装部が剥がれた元凶部のアップ画像 ビーズが埋まっています。
歯頚部には内冠のメタルが1mm幅で見えていますね。

下顎前歯は人工歯でありながら、上顎前歯外冠舌面にシャイニングスポットが現れており、充分機能していた様子が伺えます。


上顎に関しては8年経過した様子が窺えません。
メタルプレートだけは新たな模型に戻らないため、再製しました。

下顎

以前、5番が二次カリエスでマグネットに変更された経緯がある。
今回も4番に二次カリエスがあったため、内外冠を再製した。



顎堤もしっかりとしている。


下顎メタルプレートとハウジングは使い回しました。
全くのすれ違いでリベースもなく、8年間大きな問題もなく経過しているのをみると、コーヌスクローネデンチャーの有効性 を実感します。

  ここまで進みましたが(;´ρ`) グッタリ 、ここからさらに大変。
 

 
コーヌスデンチャーリメイク終了            2010.11.1
硬質レジン築成、今回は外冠のマージン部までレジンを築成しました。
人工歯排列終了。


先日のデンタルショーでVITA社から”VITAFOL-H"なる商品を見つけましたので、早速取り寄せてみました。
この商品は人工歯歯間乳頭部に、石膏がこびり付かないようにその部分だけシリコンでコーティングするものです。
セールストークだとイボクラールの商品より安く、手軽だということですが、現地で触れてみた感想は、柔らかくて不安がありました。


あまり広くコーティングする意義もなく研磨し難い部分だけ覆うこと、咬合面は絶対に覆わないことだそうです。その後、シリコンが硬化する前に砂のようなリテンションサンド?を振りかけ、石膏に維持を求めるようです。
外冠にカバーしてあるシリコンと、接着する恐れがあり5番中央部で止めました。


結果、 石膏のこびり付きはありませんでした。
がーー 砂の鋭角部分がレジン床に食い込み、所々凹部が散見されました。
まあ、大した問題ではありませんが、スッキリしないですね。
しばらく使ってみることにします。


完成まで2ヶ月以上かかりましたが、何とかここまで辿り着きました。



右下4番は別として、8年経過した内外冠をそのまま流用したリメイクでも、新規に作成するのと手間はあまり変わらないように感じてなりません。


装着時の調整は、舌小帯を上方に広げたのと、右下3番近心部の床のアンダーカット部を削除しただけ。他はどこも触らずに帰宅してもらいました。

その後、1週間以上見えていないそうです。
心配 ^_^;
 
 
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