ATDCでの講義内容 その3                              2007.6.22

去る2007年5月25日にロサンゼルスの古賀エンタープライズ経営の卒後教育機関 A.D.T.C で行った講演内容のスライドと少々の説明を掲載いたします。
当日は3連休の初日で、フリウエーが渋滞し2時間半遅れで現地に到着、法月氏と二人で正味1時間20分余りの講義時間しかなく全てを伝えることが出来ませんでした。
そのため終了後に受講者より内容をサイトにアップして欲しいとの要望があり、詳しい説明がないとスライドとスライドが繋がらないようですが、掲載いたします。
日本の方には申し訳ありません、充実した内容ではありませんがご要望があればノート(説明)部分も・・・

最初の画像に戻って、改めて模型を観察してみてみましょう。
私たち技工士に寄せられる情報は限局され、模型しか届かないことが多いです。その模型のみから多くの情報を得るには見えない部分の、或いは歯科医師および歯科衛生士の知識が必要なのです。

  将来はスタディモデルや口腔内写真、レントゲンフイルム等が模型と一緒に届く時が必ず来るでしょう、さらに技工士のレベルアップが治療計画の立案に不可欠なってくるでしょう。
そのためにも多くの知識が必要になってくるのです。
さて、レントゲンを見てみましょう。 この方は60歳の男性で上顎においては全体的にの骨吸収がありますが、カリエスにも犯されにくいタイプの患者さんのようです。
しかし、 右GE 左Eの骨吸収が著しく抜歯するしか術はありません。

  口腔内と模型のギャップを推し量ることはとても難しいことですが、多くの症例を見比べると経験的に見えてくるものがあります。
左下7番の抜歯後の画像です。

  細部を見てみましょう。 模型の右側部です。 6番の根が露出して、他の部位と比べて著しく歯肉退縮を起こしています。 その原因が何なのか想像できません、しかし8番から急激にSpeeの湾曲が強くなっていることが要因とも考えられます。
GE部には付着歯肉の幅が少なくそこにも問題の可能性もあります。 5番はクラウンが適合しておらず、二次カリエスに陥ってるようです。
舌側も同じくらい退縮していますが、レントゲンのような画像は想像できません。

  歯槽骨の隆起や角化歯肉の厚さから、咬合力が強い患者さんと見受けられます。
同じ患者さんの前歯部です。両下顎中切歯に歯肉炎か、歯周炎がみられますプローブを入れていないのでわかりませんが・・・
上下関係から前歯部が開咬状態で食物によるマッサージが無くプラークが停滞しやすいのではないかと想像できます。

  先ほどのオルソを拡大してみました。 右Gのクラウンにセメントが溶け出してるような影が見えます、5番に二次カリエスが疑われ歯根膜腔も拡大しています。 8番が先にセメント流出し骨吸収が起こり、その後6番に移り咬合由来で5番の歯根膜腔拡大に至ったように思われます。 つまり一次性咬合性外傷が疑われます。
もし、下顎ブリッジが健全でしたら問題は上顎に発生するはずで、その前に下顎に問題が起こり、このような症状を起こしたのではないでしょうか?

この方は前歯部がオープンバイトで上下の犬歯にオーバージェット・オーバーバイトが無く臼歯部でのガイドしかありません。 したがって、顎関節に近い右側の8番に強いスピーの湾曲を与えてしまうと側方・前方運動時に咬頭干渉を起こすのは当然の結果とも言えます。

  チェックバイトで咬合器を調整してる訳ではありませんから、口腔内と同じような運動軌跡を描いているか判りませんが、作業側では何とかデスクルージョンしてるが、平衡側では咬頭干渉を起こしています。 特にエクステンション部でのそれは、テコの原理で遠心部での側方圧は近心部で大きな力になり骨吸収まで引き起こすまでになってしまったようです。
4番のインレーは脱離していますし、5番は二次カリエスに罹っていてクラウンと残存歯とが分離しています。 したがって6番が遠心部からの力を受けてるのに5番には歯根膜腔の拡大すら見えません。 セメントの流出で外力がかからなかったから、助かったのではないでしょうか?

  これは、先程の患者さんとは違います。これはCT撮影装置で撮影したアキシャル画像で、実際は0,2mm単位の間隔で撮影されたものを2mm間隔で抜き出した画像です。これからも多くの情報が読み取れます
 
最近までは2次元の画像で診査していましたが、今後はCT撮影装置の普及で3D画像モデリングでより多くの情報が得られるようになります。 頭蓋の皮一枚剥がした画像まで再現できるようになります。
患者さんへモチベーションを高めるにも有意義な情報となるでしょう。

  これはサジタル画像で唇側や舌側の骨の厚みや、歯軸の方向などが読み取れインプラント治療の埋入計画などで利用される、価値の高い情報です。

以上、自分たちの世代は緩やかな速度で技術革新してましたが、最近は凄まじい勢いです。
しかし、レベルの差はあれ技工士の存在無くして歯科医療が成り立たないのも事実です。
自身が何を目標にするか見極めるには、日々の勉学の努力を怠らず広く知識を吸収しておくことが大切だと思います。


今年56歳、約36年の技工経験はありますが、未だ毎日悩みながら仕事をしています。ただ長い経験からドクターと良いコミニュケーションを保つには、技工士も治療計画から参加できるほどの知識と口腔内のメカニズムを知っていなければならないと最近は特に感じています。
今回の講義に対して、歯科技工士が診査・診断を解説ことに躊躇したのが本音です。
しかし 、実際治療計画から参加するようになるとドクターとお話する機会も増え、技工以外は解りませんではドクターや患者さんは納得してくれません。
これを機に、若い方々に進むべき方向性を指し示せれることができれば嬉しく思います。

尚、このWeb Siteを立ち上げるにあたり、他の分野を学習すると足りなかった知識や曖昧に理解していた名称などがとても多く改めて自身の未熟さを痛感しました。
そこで脳の記憶が薄れるそうになったら上書きするために、ここにスライドで残しておきます。



 
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